問題解決のための読書ログ

読書でいろいろ学んだり問題解決していきます。

13歳からの地政学

どんな本か

中学生からでも学べる地形にかかわる国と国の問題

兄弟の大樹と杏が謎の老人"カイゾク"の元で地政学について学んでいく一週間の話で小説形式になっている

 

なぜ読んだか

地形が国の外交にどのように関わるのか知りたかった、戦争だったら影響与えるのはわかるけど、外交への影響の及ぼし方はどうなんだろうか

 

内容

-- 一日目 物も情報も海を通る--

貿易の90%は船によるものだが、そもそもなぜ陸路より海路を選んだのだろうか。

日本にいると想像がつかないが、陸路だと

・そもそも交通手段がない場所がある(自然環境が厳しすぎる)

・国の経由で税金がその都度かかる、手続きが面倒

等の問題があり安定しないからである。

 

物だけではなく情報も海を通っている。

情報の99%が海底ケーブルを使ってやり取りされている。

 

上記の話から海を抑えた者が強いということがわかるが、それをやっているのがアメリカである。

アメリカは世界で一番海底ケーブルを張り巡らせているし、

海軍を海に一番配置している国でもある。

 

引き続き海の話をしていくと、世界で最も大きな海は太平洋だが、

広さは二番目に大きい大西洋の二倍、

深さは平均4200m

となっている。

この深さという概念は結構大事で、排他的経済水域にある海の深さが深ければ単純に自分の縄張りが大きいこととなる。

日本は周囲の海が深いところが大きいので日本は世界で4位という高い位置になっている。

 

-- 二日目 日本のそばに潜む海底核ミサイル --

 

核ミサイルはどう使うにせよそもそも先につぶされては意味がない。

なので位置を隠すことが肝要だがどこに隠すか?

地上は人工衛星からの目が合って隠し辛いので海が有力な選択肢となる。

海といっても海の中に落としておくというわけではなく、潜水艦の中に隠しておく

潜水艦なら動いて逃げ回れるという点でも有利となる。

 

ここで核を最強の兵器にする三条件が提示されていて、

原子力潜水艦保有

・海の中からミサイルを発射する力

・そもそもの基盤となる海の支配を持つこと

 

このうち一つでも欠けると核兵器を潰されてしまうリスクが高くなるため最強とは言えなくなる。

 

ロシアも核ミサイルを保有しているが、前述の通り海に核兵器を隠しているが、そこはオホーツク海で北海道のすぐそばである。

これが日本のすぐ近くに潜む核..というタイトル回収

 

さて、ここで中国がなぜ南シナ海を欲しがるかを考えてみる。

中国は核も持っているし、原子力潜水艦もある。あとは海だけ。

他の海じゃだめか?という話だけど、

黄海原子力潜水艦が潜るには浅すぎるのでやっぱり南シナ海しかないが。

ここはどんな国の船でも入れるし、まわりにベトナムやフィリピンがいてとても自由にできるとはいいがたい。

 

ここで核を持つ意味についての話に移る。

核を持てば世界に対し、力を誇示することにつながるからであり、

力を持つメリットは、

・他の国に自国を好き勝手されない

・自分の国の通貨の信頼度が高まる(信頼度が下がって紙切れになったのがベネズエラ)

他国に対してある程度めちゃくちゃやったとしても、力を手に入れさえすれば文句も言われにくくなるのでメリットはあるというわけだ。

 

国際法でどうにかなるんじゃ?と思うけど強制力は正直薄く領土はとったもの勝ち感が強い。

ウクライナの領土だったクリミア半島がロシアに占領されても非難どまりだったし...

さすがに今回の戦争レベルまで行くと非難じゃすまないけども...

 

国の位置と外交の話

アメリカと中国はともに大国だが、お互いの中は悪い

中国と遠い国は攻められる心配がないので中国とは友好的にしやすい

中国と近い国は攻められるのが怖いのでアメリカと友好的にやっている

 

遠くの国と仲良くして近くの国の脅威に対抗することを「遠交近攻」という

 

-- 三日目 大きな国の苦しい事情 --

大きな国の国境

隣り合っている国は国境が陸にあるわけだけど、中国とロシアのように大きい国は国境も大きい。

国境全部を見張っているわけにもいかないので、必然的にある程度はうまくやっていくことになる。

 

大きな国特有の内部の問題

大きな国は内部に多くの民族を抱えているわけだけど、民族が不満に思えば国から独立されてしまう。

解決法としては単純に国を良くするか、もしくは暴力で制圧するか。

ロシアの例でいえばまず暴力で制圧してから、お金を渡して生活を良くしていた。

 

現在の中国の話をすると、現在の中国は国防費より、治安維持費の方が高くついてしまっている。

これは少数民族が豊かになれておらず不満がたまっているからで、例としてはウイグルチベットが挙げられる。

中国の治安維持とは暴力もそうだけど、監視という点もある。

 

--リーダーになるための条件--

選挙がない国では、戦争に勝ってカリスマを示すことでリーダーとしての力を示す方法がある。

中国の毛沢東だったり、最近ではプーチン大統領クリミア半島を攻撃したり。

ただ選挙があったとしても反対派を抑え込む動きだったり画策をしたりすることもあり、選挙がある=民主主義が正常に運転しているというわけでもない

 

-- 四日目 国はどう生き延び消えていくのか --

前回は大きな国を見たが、小さな国はどんな生活なのだろうか。

小さな国は大きな国の助けを借りて攻撃されないようにしている、前に記載した遠交近攻を使っている。

そもそもなぜ小さな国ができるかというと、何らかの理由で大きな国が分裂->

小さな国となるんだけど何らかの理由とは?

 

たとえば王様が治めている国だったら王様の求心力が弱くなったりとかがある。

王様と言えば君主制で、王様がいないのが共和制である。

王様と言えば絶大な権力を持っていて、やろうとすればやりたい放題なイメージがあるが、現在では王様といえども権力を持つ国は少ない。なぜだろうか。

 

政治的に誤ったことをしてしまうと国民のヘイトも向ってしまいがちになってしまう。

なので政治的な役割は王様とは分けるという方策をとっている。

 

小さな国の特色として外交官が優秀ということがある、というより優秀でなければ生き残っていけない、弱い立場に置かれてしまうからだ。

あとは自国以外の言語が達者になりやすい、これも生き残りのために話す必要があるからということ。

 

-- 五日目 絶対に豊かにならない国々 --

今回は貧困の話

アフリカは十分大きいが、なぜ貧しいのだろうか。

豊富な天然資源もあるのだから貧しさの理由は...?といなる。

本書ではこれは政治家が海外にお金を横流ししているせいだと述べている。

 

アフリカはイギリスやフランス、ドイツに支配されてきた国々で、独立したものの、

アフリカの国々の政治家とヨーロッパやイギリスの政治家が組んでしまっていて、お金が横流しされているのである。

 

なぜアフリカのリーダーはこんなことをしてしまっているのだろう。

 

アフリカは支配されていて、支配していた国々が勝手に縄張りを決めてしまったせいで

バラバラな民族が一緒の国にいるという事態になり、

独立がおこったあとは自分のいる国よりも自分の民族を優先させようとして国の中で争いが起こってしまう。

こうしたときに暴力で押さえつけるのが手っ取り早く、軍をバックにした力で押さえつけるリーダーが生まれていった。

そのリーダーも結局は自分の民族が大事なので他の民族がいる自分の国にはお金を使わず、自分の身内のためつかっている。

ただし、資源を不当に国民から奪っている汚いお金のため直接自民族のためには使えない。

なので海外にながしてマネーロンダリングをしているというわけである。

 

このアフリカから流れてくるお金はイギリスのケイマン諸島に主に流れている、俗にいうタックスヘイブン

 

アフリカの人々は資源を不当に搾取されているだけでなく、労働も搾取されている。

貧しいことから機械等の技術も導入できないため、例えばカカオ豆をチョコレートにすることができず、チョコレートで儲けるよりもはるかに低いお金しか儲けられないカカオ豆収穫しかできない。

貧しいから儲けられない、儲けられないから貧しいというどうにもならない状況になっている。

 

ここで多民族でも豊かになれた小国を希望としてあげておく。

シンガポールといえばIT系でもとても有名になっている国であるが、

この国は中国系、インド系、マレー系など他民族の国となっているが、建国の父であるリー・クアンユーは民族の争いが起きないように力を尽くした。

 

例えば一つの団地の中でも中国系のみとしたのではなく、逆に必ず他民族の団地都市交流を持たせることにした。

そして民族間の争いは徹底に取りしまった。

相互理解を経て発展していったのはとても良い好例だろう。

 

-- 六日目 地形で決まる運不運 --

今回は地形の影響の話

アメリカが海を支配していて世界最強という話を一日目にしたが、それではなぜアメリカは最強なのだろうか。

アメリカを最強たらしめているのは土地の影響によるところが大きい、

・天然資源豊富

・気候の良さ

アメリカの上下にある北と南は気候が厳しくアメリカよりも弱い、横は大西洋と太平洋で守られていて守備力が高い

 

逆に地理的に恵まれていない国の話をすると、朝鮮半島がそう。

悪条件として

・大国に挟まれている

・海や川、山などの自然の守りがない

・豊かな資源や農産物、便利な港がある(狙われやすい)

 

戦争のあとで恨みをもつもたないの違いはどこで生まれるのか

終戦記念日は敗戦ではなく終戦となっているが、

これは戦争を一旦忘れて前向きに行こうという態度、

天皇に責任を押し付けることの回避

等の理由で敗戦としてしまうと責任問題になってしまうからという理由があった。

 

韓国が日本を恨んで、なぜ日本はアメリカを恨まないのかという話が出ていたが、

日本と韓国の間では、

法律的には賠償金を払い続けているから日本はもう許されてもいいという立場、

だがあそこまでひどいことをしておいて時効も何もないしお金で許される問題じゃないから韓国に同情的な立場がある。

 

ただこれってなぜ日本がアメリカを恨まないのかの説明にはなってない気がした。

日本には原爆を落とされているわけだし、

韓国-->日本のように恨みがあってもおかしくない気がする。

これはやっぱりアメリカが多大な力を持っていることや、韓国での教育といった側面があると思うけど全く触れられていなかった...

 

-- 七日目 宇宙から見た地球儀 --

南極の話

南極は資源も豊富でどこの国というわけでもないため、争い防止のために南極条約が敷かれている。

 

地球温暖化の話-いい面と悪い面-

南極と北極と言えば地球温暖化だけど、地球温暖化と言えば、

氷が解けてしまい、海面上昇やホッキョクグマが死んでしまう等の悪いニュースがある。

ただ一応良い面もあり、

氷が解けるとヨーロッパ、北アメリカとアジアの距離が近くなり貿易のスピードが上がる

ロシアの北極付近は寒すぎるため資源が豊富な場所を採掘できなかったが温暖化の影響で、船での交通もしやすくなり資源の掘り出しが可能になっている

等の側面もある。

 

なぜ日本は極東と呼ばれるか

これは日本から見た視点ではなくヨーロッパから見た視点で見ると分かる。

ヨーロッパではヨーロッパが真ん中な地図なのでその地図上では日本が極東にあるというわけ

これは世界の中心がヨーロッパだったときの名残

 

感想

 

国と国の関係が置かれている場所によるものであったり、その場所によって国の特性が変わってきたり行動が変わってきたり...ということを学べた。

特に小説仕立てになっているのですっと頭に入ってくる。まさに13歳から~というタイトルにふさわしかった。

 

ただ、もやもやする点もあった。

国の生き死にを議題に挙げている章があったが、

どうやって成立したか、滅びる具体的な流れとか、全体的にいろいろ詳しいところは書かれていないといったように説明がなされていない箇所もあったように思える。

これはタイトル通り入門編なのでこの本の範囲を超えるということだろう。